スマートフォンのサービスでこれから大きな話題を提供しそうなのが、定額制で音楽が聞き放題になるサービスでしょう。国内ではLINEが既にサービスを開始し、今後Appleも7月1日から定額制の音楽ストリーミングを開始するということで、盛り上がりが予想されます。
この各社の音楽ストリーミングの聴き放題サービスが始まると、これまで音楽を聴く機会の少なかった方やyoutubeで適当に流していた方なんかも、より気軽に高音質な音楽と触れあう機会が増えるのではないでしょうか。
この音楽の聴き放題サービスは、聴きたい曲ごとにその場でストリーミング通信が必要になってくるため、聴く曲の数によっては毎日膨大な通信量がかかってしまう可能性があります(サービスによっては事前に聴きたい曲をWi-Fi環境でダウンロード出来るものもあり)。
そのためこのサービスを利用しようとすると、今まで以上にスマートフォンの通信量というものに気を使う必要が出てくることでしょう。
そこで今回は来るべき音楽聴き放題の世の中に備えて色々と調べてみることにしました。1曲あたりのデータ容量がどれくらいなのか、格安SIMなどの低速回線ではどれだけスムーズに聴くことが出来るのかなどを検証してみました。
ストリーミング視聴にはおそらく無制限系の格安SIMが役立つかと思うので、そのあたりの比較も行っています。
ストリーミングサービス、1曲あたりの容量
まずはこの定額制の聴き放題サービスで、1曲あたりどれだけの通信量を消費するのかを確認しておきましょう。
データ容量の確認に使った曲は2曲、
松たか子版「レット・イット・ゴー~ありのままで~」。時間は3分43秒の曲になります。
もう一つはBlack Eyed Peasの「Where is the Love」。時間は4分32秒の曲です。
どちらもLINE MUSICを基準にしています。
それぞれの容量について、Androidの「通信量モニター」アプリで通信量を計測し、以下の表に反映させてあります。
LINE MUSIC | ありのまま | Where |
---|---|---|
高音質 (320kbps) |
11.8MB | 14.5MB |
中音質 (192kbps) |
6.3MB | 9.2MB |
低音質 (64kbps) |
3.3MB | 3.6MB |
Apple Music | 約55分で約61MB (256kbps) |
定額制ストリーミングサービスにおいては、1曲あたり10MB前後、曲の長さによっては大体35MBぐらいは通信量を要すると想定しておくといいでしょうか。1曲だけでも結構使ってしまいますから、通信料の少ないプランへ加入している場合は十分に楽しめないかもしれません。
電車内でLINE MUSICを40分ほど垂れ流すと、通信量は300MBを超えていましたから、曲によっては相当な大容量ファイルもあり、1時間ほど聴くだけでも低容量なデータプランでは結構なデータ容量を消費してしまうでしょう。
Apple Musicではピットレートは256kbpsとなるため、LINEの高音質視聴よりも容量自体は少なくなりそうですが、最低でもLINE MUSICの中音質がスムーズに聞ける回線スペックが無いと満足な視聴は出来ないことが予想されます。
※追記:Apple Musicで約55分間の曲を聴き続けたところ、通信量のチェックできる範囲では約61MBという容量を使っていました。LINE Musicに比べると使うデータ容量は少なくなりますが、それでも聴きすぎると回線への負担が厳しくなるのは間違いなさそうです。
※追記2:どうやらApple Musicは回線状況によってかなりフレキシブルなピットレートの変化が起きているようです。ほぼ同じ曲をWi-Fi環境で聴き続けた結果、通信量は先ほどのモバイル回線時よりも多くなりました。約55分で108MBとLTE回線で記録した61MBよりも多くなりました。回線状況で大きく通信量が変化する仕様になっているため、目安としての通信料は出しにくくなっています。
格安SIM回線でストリーミングは聴けるのかどうか
ここからはこのストリーミングサービスが、どれだけの速度が出ていれば満足いく使い道が出来るのかという点を実験してみたいと思います。
おそらくはキャリアのLTE回線、そして混雑時ではない時のまともなMVNO事業者ならば、容量の問題はあるもののストリーミングで途切れることはなく視聴できるでしょう。
気になるのは速度制限後、あるいは高速通信クーポンをOFFにした後の低速回線での利用感がどうなるのか、という点でしょう。
クーポンをストリーミング通信で消費したくない方や低速化の後でも聴き放題サービスを利用したい方は、この部分は気になる部分ではないでしょうか。個人的にも気になるところなので、どれだけの快適な低速回線で利用できるのかを複数のMVNO格安SIMを使って実験してみました。
200kbps(バースト)、250kbps、500kbps、無制限プランで実験
実験に使ったMVNO格安SIMは、OCNモバイルONE(200kbps)/IIJmio(バースト200kbps)/wireless gate(250kbps)/UQ mobile(500kbps)/ぷららモバイルLTE/U-mobile/b-mobile(それぞれ無制限SIMプラン)となります。
200kbpsは2種類を用意し、バースト転送のあるIIJmioの回線で違いが出るかを調べています。500kbpsのUQ mobileは実効速度だと500kbps以上出ているのが過去の計測結果から判明しており、他のMVNOの500kbps回線とは特色が違うので注意してください。無制限SIMも使うため、計測時間は負荷がそこそこある19時から20時半ごろに実験をしています。
[blogcard url=”https://smaho-dictionary.net/2015/03/uqmobile-nolimit/”]
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曲が止まった回数を計測
客観的な快適さの指標になりそうなのがストリーミング中に何度再生が途切れたか、という点でしょうか。曲が途切れること無く聞ければ大部分の需要を満たせるのでは無いかと思います。そこでその曲中に止まった回数を記録してみました。
ありのまま | 高音質 | 中音質 | 低音質 |
---|---|---|---|
wireless gate | 20回 | 0回 | 0回 |
IIJ(200kbps) | 21回 | 16回 | 0回 |
OCN(200kbps) | 20回 | 9回 | 0回 |
ぷららモバイルLTE | 0回 | 0回 | 0回 |
b-mobile | 0回 | 0回 | 0回 |
U-mobile | 0回 | 0回 | 0回 |
UQ mobile | 0回 | 0回 | 0回 |
where | 高音質 | 中音質 | 低音質 |
---|---|---|---|
wireless gate | 26回 | 2回 | 0回 |
IIJ(200kbps) | 27回 | 21回 | 0回 |
OCN(200kbps) | 27回 | 22回 | 0回 |
ぷららモバイルLTE | 0回 | 0回 | 0回 |
b-mobile | 0回 | 0回 | 0回 |
U-mobile | 0回 | 0回 | 0回 |
UQ mobile | 0回 | 0回 | 0回 |
ピットレートの関係上低速回線でこうなるのは仕方のないことでしょうか。250kbpsのワイヤレスゲートでようやく中音質で聴ける速度になりそうです。ストリーミングとなるため、IIJのバースト転送はほとんど効果をなさず、200kbpsでも中音質では頻繁に止まります。
ですが200kbps回線の止まり方は高音質の場合だと体感として長く感じますが、中音質だと瞬間的な途切れに近い感じなので、聴けないこともない回線速度ではあります。
低音質ではどの回線もスムーズに聴けたため、音質にどこまでこだわるかによりますが200kbpsの一般的な格安SIMの低速回線でも使えそうです。
無制限回線の各MVNOのプランでは、SIMをスマホ直刺しなら問題はないのですが、Wi-Fiルーター経由になるとb-mobile/U-mobileが高品質でちょっと止まるケースが増えます。
低速回線・無制限回線に規制を設けているSIMもあり
一応このように無制限SIMならばほぼどのMVNOも高音質まで視聴可能、低速回線でも低音質なら問題なく視聴可能ではあるものの、一部の回線には無制限・低速回線であっても3日間の通信量によっては速度を規制するものがあり、その回線でストリーミング通信を続けるとまた違った回線状況になり体感も異なってきます。
今回実験に使ったSIMではそれぞれストリーミング状況を普通に観測したあとに、1GB前後の通信をさせた後の状態で速度に変化が出るのかも実験してみました。そうすると、IIJとU-mobileで回線速度の低下が見られました。
IIJに関しては200kbpsの状態よりも更に速度が落ちて100kbpsほどしか速度がでませんでした。IIJでは200kbps通信時に、3日間で366MB以上通信をすると速度制限の対象になるとしており、これが適用されて速度が落ちています。即時にこの速度へ落ちた訳ではなく翌日適用がされました。
U-mobileも同様です。ただ通信量が1GBではなく3GBを超えた辺りで規制が始まりました。規制後の速度は100kbps前後しかでず、この規制がかかるとストリーミングどころか普通のブラウジングすら詰まります。正確な意味での無制限プランでは無いということです。
LINE MUSIC含む定額制ストリーミングサービスにおすすめのSIMは
こうした定額制の高音質ストリーミングサービスを十分に楽しむには、やはり低速回線では難しくなりそうです。低ピットレートの従来のストリーミング系サービスならば割りと何とかなる場面もあったのですが、一定の音質等を求めるサービスだと役不足になってしまいます。
[blogcard url=”https://smaho-dictionary.net/2014/11/slow-speed/”]
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低音質でも構わないようなら低速切り替えの200kbps回線でも利用できますが、より楽しもうと思ったら無制限プランを選ぶのがいいでしょう。特にぷららモバイルLTEとUQ mobileの2つはb-mobileやU-mobileに比べて回線の安定度が高いためおすすめできます。
ただしUQ mobileはiOS8には未対応なのでご注意下さい。新しいAPNプロファイルの設定によって、au系MVNOでもiOSスマホで利用が出来るようになっています。
[blogcard url=”https://smaho-dictionary.net/2015/07/ios8-mineo-uq/”]
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低速の低音質でたっぷり楽しむならば、今回実験した範囲だとワイヤレスゲートWi-Fi+LTEやOCNモバイルONEが低速側でも速度制限がなくても使いやすそうです。ただしApple Musicにはピットレートの関係上適してはいないでしょう。
IIJ系は低速側に通信量制限があるため、高速クーポンをOFFにしたからといってストリーミングサービスを自由に楽しむことは難しいでしょう。格安SIMを選ぶ際にはこうした低速側への規制も確認した方がいいかもしれません。
他にはmineoがバースト転送を持った200kbpsの低速回線になるため、こちらも選択肢としてはいいかもしれません。UQ mobileの3GBプランは高速通信のON/OFFが出来ないため、曲を聞きたいタイミングで低速回線に出来るmineoがau系の通常プランとしては良いでしょう。200kbpsもOCNモバイルONEのように制限もなく必ず200kbpsを満たせるように速度が出る形になっています。
一方で楽天モバイルやFREETELはIIJのような制限のない無制限低速回線ですが、200kbpsが常時出るとは限らない低速回線の仕様になっています。両社とも200kbpsを下回るような低速の更に低速な速度が出るようになっており、ストリーミングがOCNやmineoに比べると止まりやすい問題が生じます。特にFREETELは299円で使える200kbpsですが、実測は200kbps以下という残念な仕様ですので、ストリーミングに関わらず普通のネット運用でも支障が出やすいです。こういった常時200kbpsが出ないような低品質低速回線の利用はしないようにしましょう。
※Apple MusicではOCNの200kbpsで実験をしてみましたが、何度かストリーミングが途切れることがありました。どうやらモバイル回線とWi-Fiとでピットレートを調整しているようで、低速回線でも少しは聴きやすいようにはなっていますが最適化まではされていないです。もしもApple Musicを使う場合にはぷららモバイルLTEが一番無難でしょう。