MVNO格安SIMの速度調査4月編です。
MNOからの接続料の値下げによってますます料金が安くなりそうなMVNO格安SIMですが、もうこれ以上安くなっても料金面でのメリットは現時点で十分な状態であり、この点の比較を熱心にしても今は大して違いもなくどれも安い料金で使えるのがMVNOの共通事項になっています。
それよりも格安SIM利用においては実生活に影響する通信速度のほうを比較して、数十円ほどの料金差を見るよりも高速に使える回線を探したほうが良い、として過去これまで毎月各MVNOの通信速度を比較しています。
ですが前回の調査で、FREETELや楽天モバイルにおいて時間帯によっては画像読み込み速度や動画読み込み速度に強い制限がかけられているのが判明しました。
この規制、あるいはスピードテストのみのブースト速度が存在することによって従来のスピードテストアプリでの測定結果を「速度比較」の参考には出来ない状況になっています。
今回は前回の検証結果を踏まえ、スピードテストの結果がどれだけそのMVNO格安SIMの通信速度を表しているのかを調査対象・調査時間を増やして確認してみたいと思います。
検証方法
検証端末等 | ドコモ系:モバイルWi-FiルーターL-01G au系:Galaxy S5 SCL23のUSBテザリング TCP Monitor Plus |
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検証時間 | 12時25分~ 16時~ 21時~ 2つの混雑して回線が輻輳する時間帯と1つの空いている時間帯を選んでいます。 |
スピードテストの速度検証 | speedtest.net |
画像のDL速度検証 | 通信の最適化を確認するやつ |
動画の速度検証 | youtube 720P |
TCPモニターの見方
TCPモニターは右から左へとパケットの流れる向きを記録しています。そのため今回各画像の右側が測定開始のタイミングになり、そこから左へ進むごとに時間ごとのパケット通信量の推移を確認できます。
一部のMVNOはバーストしており山が大きくなっているので、そっち側が記録開始地点としてわかりやすいかもしれません。
一応記録開始からのグラフには全回線なっていますが、キャプチャーのタイミングで開始点が若干ずれているものがあるのでご了承下さい。
複数の結果が連なっている画像は左からスピードテスト/画像/動画の検証結果になっており、上から12時台/16時台/21時台となっています。
FREETEL/楽天モバイル
まずは前回の調査で規制が確認できた2つのMVNO回線について。
前回は主に12時台の結果を確認しましたが、今回は時間帯を更に追加して回線状況を確かめています。
FREETELは依然として12時台の画像および動画の読み込みに対して規制をかけています。速度の波が一定であるため、明確な規制速度のラインというものを内部で設定しているのが伺えます。
16時台の帯域に余裕のある時間帯では混雑具合が規制ラインに達しないという事で規制が無いのがわかります。この時間ならばFREETEL回線での通信は多くの場面でスピードテスト通りの体感を得る事が出来るでしょう。
21時台には再び規制が入っています。大体この規制は午後6時半ごろにはスタートしているのが感じられます。
FREETELに関しては前回同様、混雑時以外の時間帯はスピードテスト通りにはなるものの、お昼や夕方以降のピークタイムではスピードテストの数字は参考にはならない、と言えそうです。
同じことは今月の楽天モバイルにも同様に言えます。むしろ前回はFREETELが特に規制の強いMVNO格安SIMという扱いをしてしまいましたが、今月の検証結果を見てみるとFREETEL以上に計測速度と実効速度の違いが見えているのが楽天モバイルです。
12時台は今回動画のパケットは流れましたが、画像のパケットはほとんど流れないという結果に。スピードテストでは3Mbps以上出ていることにはなっているものの、画像と動画のダウンロードでは全くそれを感じさせない体感速度の悪さです。
16時台も同様です。スピードテストでは平均7Mbpsほどの結果をだし、パケットの波を見ていると10Mbpsを超える速度を出す瞬間もあり、混雑していないときは速度が良さそうに見えます。ところがいざ画像、動画の読み込みとなるとどちらも平均値では恐らく1Mbpsを超えない速度になりました。FREETELがこの時間帯は規制をかけずにスピテス通りなのに対して、結構かけ離れた結果を楽天モバイルでは見せてしまっています。
21時台ではそもそものスピードテストの速度が3Mbpsと出ていませんが、画像・動画共にそれよりも下回る回線速度になっており、読み込みに特に時間を感じるMVNOになっています。
また楽天モバイルは「通信を最適化を確認するやつ」さんのサイトで、http経由の画像で865KBまでの画像が圧縮されてしまっています(=通信の最適化がされている)。規制だけでなく圧縮までしてるとなんだかFREETELが可愛く見えてくる内容でしょう。かけ放題のオプションプランなどは魅力的ではありますが、通信速度がファイルによって異なったり、画像圧縮をされたくない方にとっては楽天モバイルは選ぶべき回線では今のところないという結論が出せそうです。
IIJmio/DMM mobile/イオンモバイル
続いてはIIJ系の回線グループについて。
IIJ系全体の傾向として混雑時がスピードテスト上では遅いため、そこまで画像テスト・動画テストで速度が乖離するという傾向はありませんでした。
特にIIJmio本回線についてはほぼスピードテストに近い通信速度がどの時間帯でも記録されているため、実効速度自体は遅いもののごまかしのない結果が今月の調査からは伺うことが出来ました。
グループ全体で気になるのはDMM mobileの21時台のスピテスと画像のダウンロード速度差ぐらいです。ここが本回線と卸回線の違いなのかはわかりませんが、若干速度的には離れている印象があります。
といっても先ほどの楽天モバイルや他社MVNOと比べれば乖離は少なく、スピードテストで記録される数字を信用しても良い事業者としてみることが可能かと思われます。
mineo/NifMo
次は一部の時間帯でファイルによってダウンロード速度が低下したものの、他社に比べれば大分マシかつ実効速度としては十分なスピードを記録したMVNO格安SIMとしてmineoとNifMoが評価できます。
mineoはDプランの21時台の画像とAプランの12時台の画像、NifMoは12時と21時台の画像でスピードテストよりも通信速度が下がっているように見ることが出来ます。
ですがNifMoの12時台、mienoのAプラン12時台の画像を除き、どちらもダウンロード速度自体は2Mbpsを超えており、NifMoに関してはグラフ観測時間中に画像をダウンロードし終わるなどスピテスよりも下回る速度ながら実効速度としては不満のない通信速度を記録しています。
これならばほとんど実利用には問題ないでしょう。実効速度という観点では混雑する時間帯においてIIJmio以上の結果を残しています。
どちらも速度が出せる時間帯は動画は途切れません。一旦大きく通信をしたら休止し再度大きく読み込んで山と谷が出来るグラフが生まれています。
実用ではこの2つがかなり期待出来るでしょう。mineoはこのサイトでも何度も中長期的な利用に適した信頼できるMVNOとして紹介している通り、通信速度の改善やサービスの拡充といったことに対して積極的で、そのMVNOという事業に対する姿勢が極めて前向きでありユーザー目線を持って取り組んでくれています。NifMoは一時の不調を脱したようで、過去の通信速度もスピードテスト上ではここ数ヶ月上向いています。これならばまたしばらくは高速なMVNOとして利用できるのではないでしょうか。
気になる部分はあるものの、実効速度では問題ないために速度比較という点ではこの2つがベストに近い選択になるでしょう。
参考としてUQ mobile
スピードテストの結果が良いMVNO格安SIMと言えばUQ mobile。こちらの検証が個人的には楽しみだったのですが、SCL23のテザリングにmineoのAプランと違って何故か反応しないので、同一の検証が出来ていません。
一応参考としてスマホアプリの通信量モニターを使って通信を最適化するやつとyoutubeに接続した際の通信速度を確認しておきます。
全時間帯スピードテストに近い速度にはなっているものの、実際の速度経過を見ていると12時台の画像で1Mbps以下の通信速度も頻繁に確認でき、ダウンロードに時間がかかっているのを感じました。12時台の画像の通信速度がかなり波があるため、スピードテスト通りとは他社MVNO同様正確には言えなさそうです。21時台もスピードテストよりも下がる速度にはなっているものの、実効速度としては十分に快適にはなっているので、こちらは合格点でしょう。
その他
上記以外にも多くのMVNO格安SIMを検証にかけましたが全部をまとめるのも面倒なのでここでまとめて。
通信速度規制と言えばb-mobileというのは古いユーザーにはお馴染みですが、今でもそれは動画において確認できています。動画だと一定以上の速度が出ないようになっています。ただスピードテストをごまかすようなことはしてないようです。全体的に遅い回線であることは隠していません。
WonderLink Fプランは今回の中では非常に良い結果になっています。21時台の速度がスピテス含めて遅くなっているので個別には触れていませんが、それ以外の時間帯は画像も動画もスピテスに準拠した実効速度を記録しています。特に動画の読み込みはmineoやNifMoのように必要な分をいっぺんにダウンロードして負荷を軽くするタイプではなく、ほぼ常時通信して先読みしていくタイプの通信方式を採っています。これにより動画の先の場面にジャンプしたときでも読み込みが済んでいれば非常に素早いレスポンスで視聴を継続することが出来ます。
夜の速度が最近遅くなっているのは残念ですが、スピテス通りに通信できるSIMの一つであることは間違いなさそうです。
U-mobileはLTE使い放題プラン。プランの特性を考えると決して悪い速度ではないかもしれません。遅いことは遅いものの、U-mobileはもっと厳しい規制をかけていそうなイメージがあったため、意外とちゃんとやってて拍子抜けした感があります。3日で1GB~2GBほど通信すると無制限プランは規制が入るのは相変わらずですが、無制限プランにしてはそこそこの結果と内容ではないでしょうか。ずっと遅かったぷららモバイルよりも評価できるでしょう。
OCNモバイルONEは規制があるのかどうかちょっとわかりません。あるという風に見ることもできますが、そもそもが遅いので誤差の範疇かもしれません。単純に実効速度という点では規制など関係なく選ぶ優先順位は低くなるでしょう。
BIGLOBEは通信の最適化オプションを外すことができるのでこれを外した契約になっているのですが、動画の読み込みで規制されているであろう動きが確認できます。スピテス自体遅い分楽天やFREETELみたいに期待値は高くないですが、ちょっと残念なところがあるでしょうか。
全体的に高速プランでもバースト転送する挙動のあるMVNO格安SIMが多いのが印象的です。
4月のまとめ
ということで今月から計測方法をちょっと大きく変えてみました。
スピードテストの結果が信用できなさそうなMVNOが増えているため、またいい方法が見つかるまではこの形式で。
以下には今回の結果から出した表を。正確な通信速度の平均値は出せないため数字は目視での平均値の目安です。
TCPモニターのグラフ上で一定の規制値が確認できるものは黄色や赤色の背景にしています。
実効速度が1.5Mbpsを超える結果は太字に。今回はIIJ系、mineo、NifMo、UQ mobile、WonderLink F、FREETELが目立っています。
MVNO | 時間帯 | スピテス | 画像 | 動画 |
---|---|---|---|---|
IIJmio | 12時 | 0.4Mbps | 0.4Mbps | 0.4Mbps |
16時 | 15Mbps | 13Mbps | 10Mbps | |
21時 | 3Mbps | 1.7Mbps | 2.5Mbps | |
DMM mobile | 12時 | 0.5Mbps | 0.4Mbps | 0.5Mbps |
16時 | 14Mbps | 11Mbps | 10Mbps | |
21時 | 3.9Mbps | 1.2Mbps | 2Mbps | |
イオンモバイル | 12時 | 0.4Mbps | 0.4Mbps | 0.4Mbps |
16時 | 13Mbps | 15Mbps | 10Mbps | |
21時 | 1.4Mbps | 1.3Mbps | 1.7Mbps | |
mineo-d | 12時 | 0.8Mbps | 0.7Mbps | 1.3Mbps |
16時 | 28Mbps | 16Mbps | 10Mbps | |
21時 | 6Mbps | 2.2Mbps | 3.8Mbps | |
mineo-a | 12時 | 1.1Mbps | 0.7Mbps | 1Mbps |
16時 | 20Mbps | 19Mbps | 8Mbps | |
21時 | 3.5Mbps | 3Mbps | 2.2Mbps | |
NifMo | 12時 | 3Mbps | 0.4Mbps | 1.5Mbps |
16時 | 15Mbps | 10Mbps | 10Mbps | |
21時 | 7Mbps | 2.8Mbps | 6Mbps | |
UQ mobile | 12時 | 2.1Mbps | 0.9Mbps | 0.9Mbps |
16時 | 6.5Mbps | 8.4Mbps | 6.2Mbps | |
21時 | 17Mbps | 4Mbps | 6.6Mbps | |
FREETEL | 12時 | 17Mbps | 1Mbps | 0.8Mbps |
16時 | 16Mbps | 15Mbps | 10Mbps | |
21時 | 14Mbps | 1Mbps | 2Mbps | |
楽天モバイル | 12時 | 3.5Mbps | 0.0Mbps | 1.2Mbps |
16時 | 7Mbps | 0.8Mbps | 0.7Mbps | |
21時 | 2.2Mbps | 0.6Mbps | 0.7Mbps | |
OCNモバイルONE | 12時 | 1.2Mbps | 0.76Mbps | 1.2Mbps |
16時 | 3.8Mbps | 1.1Mbps | 2.3Mbps | |
21時 | 1.3Mbps | 0.39Mbps | 0.8Mbps | |
BIGLOBE LTE・3G | 12時 | 0.35Mbps | 0.37Mbps | 0.4Mbps |
16時 | 16Mbps | 16Mbps | 0.7Mbps | |
21時 | 3Mbps | 1.4Mbps | 0.7Mbps | |
b-mobile高速定額 | 12時 | 0.5Mbps | 0.7Mbps | 0.3Mbps |
16時 | 0.35Mbps | 0.4Mbps | 0.4Mbps | |
21時 | 0.3Mbps | 1.3Mbps | 0.2Mbps | |
U-mobileLTE使い放題 | 12時 | 1.7Mbps | 0.45Mbps | 2Mbps |
16時 | 1.6Mbps | 0.7Mbps | 1.8Mbps | |
21時 | 0.8Mbps | 0.4Mbps | 1.2Mbps | |
WonderLink F | 12時 | 10Mbps | 12Mbps | 9Mbps |
16時 | 15Mbps | 12Mbps | 6.5Mbps | |
21時 | 1.2Mbps | 0.4Mbps | 1.5Mbps |
楽天モバイルは旧APNの低速状態の放置から、現在の新APNによる速度改善で大分期待値が高まってきた中で先月や今月の結果となるため、再び落胆させられることになりました。運営も変わってそろそろ信じて良いMVNOになったかと思いましたが、大して中身は変わってないようです。
スピードテストよりも全体的に実効速度は遅くなおかつ画像も圧縮されてしまうという、結構酷く通信内容に手を加えています。
楽天モバイルに比べるとFREETELは混雑時以外はスピテス通りの速度が出せるため、そのことを踏まえた上で限定的な運用を行っていくのならば楽天モバイルよりもまだマシでしょう。キャンペーン次第では結構安く運用することが出来るため、キャンペーンによってはデータプランのみですが契約してもいいかもしれません。あまりにもスピテスとかけ離れている結果はすぐにでも改善してほしいところですが。
これまで高速とされてきた2社のMVNOがどちらもスピードテストに信頼性がほぼない結果に現状なってしまっています。
⇒FREETEL
信頼性をベースに選ぶならIIJ系の回線グループ、それにmineoあたりが従来通り中長期的に期待が持てるMVNO格安SIMでしょう。
IIJmioとmineoは運営姿勢としてユーザー目線をしっかりと持った事業者です。
iOSの動作報告などもこの2社は早く、MVNO各社が積極的でない情報提供をちゃんと行ってくれます。IIJミーティングやマイネ王ではユーザーの意見から逃げずに真摯に向き合ってくれる姿勢を感じます。
ユーザーに向き合う姿勢を持った事業者だからか、あるいは通信速度等をごまかさない事業者ゆえにユーザーと向き合えるのかはわかりませんが、信頼性の高いMVNOとして共通している姿勢が見えるこの2つのMVNOは中長期的に選ぶのに安心感があります。
規制が小さいという点の他にも、mineoの方は実効速度という点ではIIJよりもよく、パケット単価もパケットギフトオークションやフリータンクを使うことで実質的にMVNO最安値で使えるメリットがあります。IIJmioはビックカメラ店頭でのサポートが、イオンモバイルならばイオンでサポートが受けられるというメリットが得られます。
通信料を安くした上でしっかりとした品質の回線を得たいのならばこの2つからが基本になるでしょう。
⇒イオンモバイル[blogcard url=”https://smaho-dictionary.net/mvno/mineo/”]
ドコモ系の格安SIMでは今回はNifMoも良い結果を見せたのでこちらも選択肢に入れて良いでしょう。キャッシュバックキャンペーンで名を馳せていた頃よりも勢いは落ちてしまっているものの、ここ最近は全盛期に近い速度を見せており、またしばらくは快適に使えることでしょう。
⇒NifMoau系では今回正確な調査が出来ておらず、尚且つ一部の時間帯で速度の波がありましたが、相変わらずUQ mobileも契約に適した回線かと思います。auスマホの有効活用が出来るので、auからの乗り換えなどにはまず選択肢に入るでしょう。ぴったりプランがau系からのMNP特典なしだったり、iOSの動作報告が遅かったりと問題もありますが、現状安定した評価が下せるMVNOです。
ここ最近はスピードテスト上の速度が良いということでFREETELや楽天モバイルへの注目や評価が上がっていましたが、実際の速度を見ていくと結局MVNOとしてしっかりユーザーに向き合っていた事業者が安心・信頼に値する回線であるということになりそうです。
なおmineoを契約する際には以下の紹介コードを使っていただけるとちょっとお得になります(小声)
https://mineo.jp/syokai/?jrp=syokai&kyb=F9H8C6U4X9